新しい病院へ
前回の続き。
やはり、「できる限り速やかにリウマチ専門の医師にかかり、一日でも早く治療を開始しなければならない」と言われるくらい、リウマチ専門の医師を頼りにするのが一番なのだ。
このまま地元の非リウマチ専門医のもとを無駄にかけずり回って、日々をただ過ごしていても意味がない(というより百害あって一利なし)と思った僕は、隣の県庁所在地でリウマチ科を探し、「近いために一番通いやすい」という理由で一つの病院を見つけて電話した。
電話応対してくれた方から、血液検査の結果表を持って来るようにと言われ、僕は翌日いそいそと出かけていった。車で40分ほどの病院だ。
受付で名前を書き、血液検査の結果を渡して椅子に腰掛けた。
この病院は予約というシステムが無く、行った順から名前を呼ばれるということなので、僕はまたバッグから「カラマーゾフの兄弟」第4巻を引っ張り出すと読書を始めた。例によってこの小説の人物たちの関係は本当に分かりづらく、ネットで検索すれば「カラマーゾフの兄弟の相関図」なるものがたくさん出てくるほど登場人物が多く理解に手を焼く。さらに、例えばコーリャ・クラソートキンという人物は同じページの中で「コーリャは立ち上がった~」、「クラソートキンはびっくりして~」と呼び方が変わる。ただでさえ多い登場人物なのに、人によってはさらにこれに愛称が加わり、同一人物が3つの呼び方を持つ。
極め付きは、もともと読み慣れない「古典」独特の表現である。はっきり言って内容はあまり理解できてない上に、もう二度と読み返そうとも思えない。自分のセンスが無いのがそもそもの理由だが、面白くない。
僕が小一時間ほど小説を手にブツブツと不平不満を言っていると、名前を呼ばれた。
医師は小柄な男性で、歳は60歳手前くらいであろうか。
穏やかそうで、話はとても聞きやすく、簡潔で明瞭で、僕の気になっている病状のことに関してもしっかり聞いてくれ、淀みなく、伝えにくいことも曖昧にせずに答えてくれた。
先生曰く「検査の結果を診させてもらったがこれは関節リウマチで間違いない。しかしレントゲンでは関節の破壊は一切見られないので、ステージ1である」、また、「数値的には予後不良になる可能性も否定できない高い値」であるということだ。
更に加えて、「もう今日からでもすぐに治療を開始したほうが良いと思う」とアドバイスを受けた。
先生は、僕が前回行った地元のI病院での「担当してくれた先生が休みに入ってしまうため、リウマチと診断されたが15日間ほどの痛み止めを処方してくれただけだった」という点を非常に憤っておられた。なるべく早く、最初にしっかりした治療を開始することは現代のリウマチ治療の「いろはのい」なのだそうだ。
僕としても早く治療を開始することで、大丈夫かな、怖いな、と恐れる「自分の気持ち」が楽になる。
先生と相談した結果、リウマチ治療のファーストステップである「メトトレキサート」を始めることとなった。
ここをご覧になっている方はもうこの薬のことくらい百も承知であろう。
メトトレキサート(MTX)は、世界中で最も使用されている関節リウマチの治療薬で、日本では1999年に承認された。高い有効性、継続率、骨破壊の進行を抑制する効果や、生活の質(Quality of Life: QOL)、生命予後(寿命)の改善効果が示され、関節リウマチ治療の第一選択薬(診断されたらはじめに使用する薬)、アンカー薬剤(中心的役割を担う薬)となっている。しかし、もともと肺の病気があったり、腎臓や肝臓の機能が悪いとMTXを使用できないこともあるため、使用前には十分な検査が必要なものである。
僕は糖尿病治療のため、幸いにして直近の肝臓と腎臓の血液検査を持っていけたのだが、それらの数値は全く問題なく、レントゲンの結果は肺にも何ら異常を認められなかったため、先生にお願いして今日からの治療を望んだ。
しかしそこで、先生から思いもよらないことを告げられた。
「お勧めは、週に1度打つ自己注射であるメトジェクトです。」
僕は頭の中で「じこちゅうしゃ」という単語が変換できずに(事故駐車?)、2秒ほど遅れてから正確に1オクターブ高い声で「注射!?」と発声した。
何でも、「飲み薬のメトトレキサート」が週のうちに数日間に渡って複雑な飲み方をしなくてはならないことと比べて、「注射のメトトレキサート」は週に1度、自分で自宅で行うだけでよいため間違いやうっかり忘れてしまうことが防げる。
また、吐き気などの副作用も抑えられるし、自己注射なら毎週病院に通う手間もなくなるとのことだった。
もちろん飲み薬を選択する方法もあるし、病院に毎週通って注射してもらうという選択肢もあるが、僕は「自己注射」を選択することにした。先生のお勧めに従い、しっかりと治療に向き合いたかったのだ。
「先生、言うことをよく聞いて真面目に治療しますので、どうぞよろしくお願いします」と伝え、僕はいよいよ関節リウマチの寛解へ向けた治療の第一歩を開始した。
今日は自己注射の練習として、お腹に「腹」に見立てたベルトを巻き、それに「注射練習キット」のようなものを使って、腹の消毒から自己注射までの一連の作業を練習した。
練習の結果は、看護師さんたちから「完璧ですね!」と絶賛された。いくつになっても褒められるのは嬉しいものだ。僕はもともと、物覚えが早いのだ。
肝心なホンモノの注射自体は看護師さんに腕に打ってもらった。
針は細く、容量も少ないため、自分でもなんとかできるような気がした。
治療開始
抗CCP抗体 83.6
リウマトイド因子 70
令和5年7月19日、治療開始。
現在は膝の痛み(立つときに少し身構える程度)、左手薬指第二関節、右手中指第二関節の痛み(軽度の突き指程度だが、重めのものを持つ作業時は痛む)。
- メトジェクト皮下注10mgシリンジ0.2mL 週1回
- ケアラム錠25mg 毎日1錠
- フォリアミン錠5mg 注射の翌日に1錠
